番外編 / 2026.11.08

蓄熱を4つ試してみた。効いているのか、正直よく分からない。

エコハウスの5つの要素の、さらに上の番外編です。自邸では、日射の熱をためる「蓄熱」を4つ試しています。水、土間、床の石膏ボード、そして蓄熱塗料。やってみて分かったことを、正直に書きます。

試した蓄熱水・土間・床・塗料
の4つ
いまの考え方取り込みすぎたら
窓を開けて逃がす

PLAN

最初は、コンクリートブロックの腰壁を考えていた

リビング兼寝室の南側は、日射を思いきり取り込むために大きな掃き出し窓にしました。ただ、それだと外からの目線が気になります。そこで最初は、目隠しを兼ねて、日射の熱をためるコンクリートブロックの腰壁を積もうと考えていました。最終的には、黒く塗った箱に水のペットボトルをためる形になりました。

リビング兼寝室の計画パース。南の大きな窓の手前に、コンクリートブロックの腰壁がある
2020年3月の計画パース。窓の手前に、目隠しと蓄熱を兼ねたコンクリートブロックの腰壁を描いていました。

FOUR TRIALS

自邸で、4つの蓄熱を試しています

1つ目は、水

南側の大きな掃き出し窓の手前に黒く塗った箱を作り、その中に2リットルのミネラルウォーターのペットボトルをためています。ひと箱に36本、72リットル。最初は10箱・720リットルを置く計画でしたが、いまは180本(6×6×5)、水にして約360リットルです。

黒く塗ったベニアの箱が2つ並んでいる
2021年11月、黒く塗ったベニアで蓄熱の箱を試作したところ。ペットボトルはまだ入っていません。

晴れた冬の日には、窓際はかなりの温度になります。サーモグラフィーで見ると、日の当たる窓際のソファーの裏は60度近くありました。

冬の晴れた日、南の大きな窓から日が差し込むリビングサーモグラフィーの画像。日の当たるソファーの裏が約60度になっている
2023年1月。左が普通の写真、右がサーモグラフィー。日の当たる窓際は60度近くになります。

2つ目は、土間の部屋

窓から入った日射を、土間のコンクリートに直接ためる形です。

大きな南窓のある土間の部屋に、黒いタイルを並べたところ
土間の部屋。2024年6月、床にタイルを並べたところです。

3つ目は、床の石膏ボード

窓際の床に、強化石膏ボード12.5ミリを2層重ねて25ミリの蓄熱層にし、その上に黒いタイルを敷きました。名付けて「蓄熱半間テラス」です。蓄熱層の幅は南側から91センチ。石膏ボードの短辺の寸法で、30センチのタイルがちょうど3枚収まる、切りのいい寸法にしています。

窓際の床に、重い強化石膏ボードを二重に張ったところ石膏ボードの上に、黒い300角のタイルを並べてみたところ
2024年1月。左は窓際の床に強化石膏ボードを二重に張ったところ。右は、その上に黒いタイル300角を並べてみたところで、幅91センチにちょうど3枚収まります。
完成した黒いタイルの床に、たくさんの植物を並べている。窓の外は雪
完成した「蓄熱半間テラス」。植物を並べました。

4つ目は、蓄熱塗料

LDKの壁にだけ、蓄熱塗料(潜熱蓄熱塗料)を塗っています。塗料の中には、とても小さなカプセルに入った蓄熱材が混ぜてあります。この蓄熱材は、20度から25度くらいの室温の範囲で、少しずつ温度を変えながら、液体と固体の間を行き来します。形が変わるときには、温度を変えずに熱を出し入れします(潜熱)。それで室温を安定させるという、「塗る蓄熱」です。

ちなみに、ベースは普通の水性ペンキなので、塗っている間は換気できないとかなり臭います。塗っている間は、LDKにいられませんでした。

ローラーで凹凸を付けて塗った、蓄熱塗料の壁蓄熱塗料を塗り終わったLDKの壁
2025年1月。ローラーで凹凸を付けて塗りました。表面積が増えて効きやすくなり、見た目も左官仕上げのようになります。

HONESTLY

効いているのか、正直よく分からない

4つ試してみましたが、正直なところ、効いているのかどうか、よく分かりません。

断熱が今ほどでなかった2023年の冬(3月)は、黒い箱の水が室温よりわずかに高い温度を保っていて、少しは効いているように見えました。夜、窓際の冷たさをやわらげ、ゆるやかに部屋に熱を返してくれていたのだと思います。

温湿度計アプリのグラフ。ウォーターラックの温度温湿度計アプリのグラフ。リビングの温度
2023年3月、温湿度計のアプリで、黒い箱の中(左)とリビング(右)の温度を見比べたところ。

ところが、壁の断熱を400ミリ級に強化して(2023年6月)、家全体が安定してからは、違いが分からなくなりました。蓄熱塗料も、正直いまいち効果を感じていません。

いまの室温のログを見ると、日が出たときのオーバーヒートは吸収できていません。やはり25度を超えると、室温はすぐに上がります。一方で、25度あたりから下がることも、あまりありません。これが蓄熱の効果なのかもしれません。ただ、室内にはボイラーや冷蔵庫、パソコンなど、熱を出すものがたくさんあります。その発熱のおかげとも考えられます。正直なところ、よく分かりません。

床の「蓄熱半間テラス」も、完成した直後に夜のサーモグラフィーで見てみましたが、タイルの部分とフローリングの部分で、表面の温度に違いはありませんでした。

サーモグラフィーの画像。タイルの部分とフローリングの部分の温度がほぼ同じ
2024年1月、夜11時のサーモグラフィー。タイルとフローリングの表面温度に差がありませんでした。

SOLAR GAIN

日射の熱は、蓄熱で吸い切れる量ではない

理由として考えているのは、日射で入ってくる熱の量がとんでもなく大きいことです。晴れた日には、冬でも室温が27度、30度を超えることもあります。黒い箱の水や土間のコンクリート、床の石膏ボードがためられる量では、とても吸い切れません。

蓄熱塗料を塗り終えた3日後の2025年1月6日、晴れた昼すぎのリビングは30.6度になりました。そのときは「お日様のエネルギーは、そんなもんじゃない」と思い知らされました。

温湿度計アプリの画面。リビング目線高の温度30.6度、相対湿度60パーセント
2025年1月6日12時51分、リビングの温湿度計。1月でも30.6度まで上がりました。

OPEN THE WINDOW

多すぎた熱は、窓を開けて逃がす

だから、いまの考え方はシンプルです。日射はしっかり取り込む。取り込みすぎて暑くなったら、窓を開けて逃がす。熱と一緒に、こもりがちな湿気も抜けていきます。蓄熱に頼るより、窓開けで調整する方が理にかなっていると考えています。

日射を取り込む窓の考え方は、パッシブデザインのページで紹介しています。

GOOD POINTS

それでも、良かったこと

黒い箱は、腰壁の代わりになっています。ふだんいる部屋の南側に大きな掃き出し窓があると、さすがにプライバシーが気になります。箱が足元を隠してくれます。

中のミネラルウォーターは、非常時の備えとしても使えます。

石膏ボードの上のタイル床は、水に強いのが良いところです。南側には植物をたくさん置いていて、ときどき水やりをしくじって水がこぼれますが、タイル床なので床に染み込まずに済んでいます。

NEXT

この冬、測ってみます

この冬は、黒い箱のペットボトルの間に温度計を入れて、真冬の晴れた日に水がどのくらい温まるのかを測ってみます。結果が出たら、このページに追記します。