COLUMN / 2026.10.27
八戸の気候で、壁の結露を1年分計算してみた。
防湿フィルムと可変調湿シート。2つの防湿層で、壁の中の温度と湿気の動きを1時間ごとに1年分計算して比べました。
結果:防湿フィルムでも問題なし。可変調湿シートなら、さらに安全。
(カビの目安80%にほぼ境目)
(余裕をもって下回る)
WHY
「冬の1日」だけで判断していませんか
壁の中の結露の検討というと、一般的なのは冬の寒い1日を切り取って「壁の中で結露するか」を確かめるグレーザー法です。手軽で分かりやすい方法ですが、実際の壁は季節や天気によって湿気をためたり吐き出したりしています。冬だけを見ていると、夏に壁の中で何が起きているかは分かりません。
そこで家工房では、壁の中の温度と湿気の動きを1時間ごとに追いかける「非定常」の熱・湿気計算のプログラムを自作しました(EN 15026の考え方にもとづく計算です)。気象庁の八戸の2025年の実際の観測データ1年分を使い、自社設計の「中居林の平屋のような家」の外壁で計算しています。

WALL
計算した壁
室内側から屋外側へ、次の構成です。
- 石膏ボード 12.5mm
- 防湿層(2種類で比較)
- 高性能グラスウール16K 105mm(充填断熱)
- 構造用合板 9mm
- 高性能グラスウール16K 105mm(付加断熱)
- 透湿防水シート
- 通気層
- 杉板
防湿層は次の2つを比べました。
- 防湿フィルム 0.2mm(一般的なポリエチレンフィルム。JIS A 6930 B種)
- 可変調湿シート(pro clima INTELLO PLUS)
TWO SHEETS
防湿フィルムと可変調湿シートの違い
防湿フィルムは、季節を問わず湿気をほぼ通さない膜です。冬に室内の湿気が壁の中へ入り込むのを止めるのが役目です。
可変調湿シートは、まわりの湿度によって性質が変わります。乾いているときは湿気を止め、湿ってくると湿気を通すようになります。冬は防湿フィルムと同じように湿気を止め、夏に壁の中が湿ってきたときには、その湿気を室内側へ逃がす通り道になります。
HACHINOHE
八戸の気候と、壁の中の湿気
八戸の冬は寒く、外の空気は乾いています。室内で暖められた空気の湿気が壁の中へ向かう、いわゆる「冬型結露」の方向です。
一方、夏は湿った外気が続きます。計算に使った2025年は、八戸も記録的な猛暑の年でした。夏の夜は気温21℃・湿度94%といった時間帯もあります。冷房で冷やした室内に向かって外の湿気が壁の中へ入り込み、防湿層の手前にたまっていきます。こちらが「夏型結露」の方向です。
計算では室内側も、夏は25℃・湿度60%と厳しめの条件にしています。
RESULT
計算結果
どちらも1年を通して結露は0時間
防湿フィルム、可変調湿シートのどちらでも、1年を通して壁の中の結露は0時間でした。構造用合板の含水率も最大で16%前後で、年を重ねるごとに水分がたまっていくこともありません。
冬は壁の中がカラカラ
冬は、付加断熱のおかげで構造用合板が暖かいまま保たれ、壁の中は乾いた状態です。防湿層のすぐ外側の湿度は30%前後で推移しました。

差が出たのは夏
2つの防湿層で差が出たのは夏です。防湿層のすぐ外側(充填断熱の室内側)の湿度を30日平均で見ると、最も高い時期で
- 防湿フィルム:82%
- 可変調湿シート:77%
でした。カビが生えやすくなる目安とされる湿度80%に対して、防湿フィルムはほぼ境目、可変調湿シートは余裕をもって下回ります。可変調湿シートは夏に湿気を室内側へ逃がせるぶん、壁の中が一段ドライに保たれる、という結果です。

なお、防湿フィルムは実際の製品の値(0.2mm品)で計算しても同じ結果でした。また、壁の向き(東西南北)を変えても差はほとんどありませんでした。効いているのは日射よりも、八戸の夏の湿った外気そのものです。
SUMMARY
まとめ
付加断熱をしっかり施した壁であれば、一般的な防湿フィルムでも結露の心配は特にありません。そのうえで、夏の湿気の逃げ道まで考えると、可変調湿シートのほうがより安全、というのが今回の結果です。
家工房では、こうした計算で壁の構成を確かめながら設計しています。「この壁で本当に大丈夫?」という疑問があれば、お気軽にご相談ください。
FAQ
よくある質問
グレーザー法と非定常計算は何が違うのですか?
グレーザー法は、冬の1日など決まった条件で、壁の中で結露するかを確かめる方法です。非定常計算は、実際の気象データで1時間ごとに温度と湿気の動きを追いかけるため、季節による変化や夏の湿気の動きまで確かめられます。
防湿フィルムでは結露しますか?
今回計算した付加断熱の壁では、防湿フィルムでも1年を通して結露は0時間でした。夏に防湿層の手前の湿度が上がりやすい点は、可変調湿シートのほうが有利でした。
可変調湿シートは、冬の防湿性能が落ちませんか?
乾いているときは湿気を止める性質のため、冬は防湿フィルムと同じように室内の湿気が壁の中へ入るのを止めます。今回の計算でも、冬の壁の中は乾いた状態でした。
