COLUMN / 2026.11.08

古い木造住宅は、なぜ寒いのか。

壁をはがして断熱材を入れ直したのに、暖かくならない。そんな例がたくさんあります。原因は断熱材の量ではなく、日本の在来木造住宅のつくりそのものにあります。八戸で断熱リノベーションをしている家工房が、壁の中で何が起きているのかを説明します。

ポイント:壁の上と下が、床下と天井裏に開いている。そこを冷たい空気が流れている。

壁の上下が開いたままの家断熱材を足しても
ほとんど効かない
気流止めをした家もともとの断熱材が
効き始める

SYMPTOM

断熱材を入れたのに、暖かくならない

せっかく壁をはがして断熱材を入れ、内装もきれいに仕上げて「これで暖かい家になる」と期待したのに、ほとんど暖かくならなかった。そんな例が、実はたくさんあります。

新住協(新木造住宅技術研究協議会)の技術情報第42号「在来木造住宅の断熱・耐震改修」(2010年)にも、壁の内側をすべてはがして、グラスウールを厚いものに詰め直しても同じことが起こり、やはり断熱材は効かない、と書かれています。断熱材を足すだけでは、古い家は暖かくならないのです。

外壁の外側に断熱材を張り付けて、その上に新しい外装材を張る改修も、昔から行われています。しかし、壁の中の気流を止めない限り、こうした改修の効果はほとんどないと、新住協の技術情報第60号(2024年)でも注意されています。

CAUSE

原因は、壁の上と下が開いていること

日本の在来木造住宅は、外壁も間仕切り壁も、壁の中が空洞になっていて、その上は天井裏に、下は床下に開いています。

冬に暖房すると、壁の中の空気も暖められて上昇し、天井裏へ抜けていきます。そのぶん、床下の冷たい空気が壁の中に吸い込まれます。煙突と同じ仕組みです。壁にグラスウールが入っていても、そのすぐ横や中を冷たい空気が流れていれば、断熱材はほとんど働きません。

間仕切り壁でも同じことが起き、たくさんの熱が天井裏へ抜けていきます。室内や床下の湿気も一緒に壁の中へ吸い込まれ、壁の中や天井裏で結露する原因にもなります。この現象は寒い地域ほど激しく、程度の差はあっても日本中の在来木造住宅で起きていると考えられています。

外壁の断面の拡大イラスト。左は気流止めなしで、床下の冷たく湿った空気が壁の中を上り、室内の湿気もコンセントのすき間から入り込んで結露し、暖気が天井裏へ抜けている。右は壁の上下を圧縮グラスウールでふさぎ、気流も結露もない状態
イラスト:外壁の中の気流と結露。左が気流止めなし、右が壁の上下をふさいだ状態。新住協 技術情報 第42号の図をもとに作成。

BETWEEN FLOORS

1階の天井と2階の床の間にも、冷たい空気が入る

2階建ての家では、1階の天井と2階の床の間(階間)にも空洞があります。この空洞は、1階だけの屋根がかかった部分(下屋)の小屋裏とつながっていることが多く、小屋裏換気で入ってきた冷たい外気が流れ込みます。

その冷たい空気が2階の床を下から冷やし、さらに2階の壁の中を上って、2階の天井裏へ抜けていきます。2階の床が冷たく感じる原因のひとつです。

2階建ての在来木造住宅の断面イラスト。床下の冷たい空気が壁の中を上がって天井裏へ抜け、下屋の小屋裏の冷たい空気が1階と2階の間に流れ込み、室内の暖かい空気も天井裏へ逃げていく様子
イラスト:在来木造住宅の壁の中の気流。青い矢印が冷たい外気、赤い矢印が室内の暖かい空気。新住協 技術情報 第42号の図をもとに作成。
1階の天井をはがしたところ。2階の床の根太が外壁まで渡り、壁の上の空洞とつながっている壁の少し手前で2階の床を根太ごと切り、気密シートを通して根太掛けで受け直したところ
写真:八戸ニュータウンのQ1.0リノベ(2022年)。左は1階の天井をはがしたところで、2階の床の根太が外壁まで渡っています。右は、壁の少し手前で2階の床を根太ごと切って気密シートを通し、シートの上から根太掛けで受け直したところです。

FLOOR

床まわりのすき間(根太工法の床)

古い家の床は、土台や大引の上に根太を渡し、その上に床板を張る「根太工法」です。この床では、構造の木材と床板の間、床と壁の取り合いにすき間ができていて、そこが空気の通り道になります。床下の冷たい空気は、そこから外壁や間仕切り壁の中へ入り込みます。

自邸の改修で1階の床板をはがしたところ。根太が外壁の際まで並び、根太と根太の間から床下の地面が見えている
写真:自邸の改修で、1階の床板をはがしたところ(2020年)。根太と根太の間は床下とつながっていて、そのまま壁の下まで続いています。

しかも、1階の外壁の下の部分は、根太・間柱・柱・土台が入り組んでいて、あとからふさぐのが難しい場所です。壁と床・天井の取り合いには、壁材を留める下地があり、その釘の先が壁の中に出ていることも多く、何かを詰め込むにも工夫が要ります。

リノベで気をつけたいところ

1階の外壁の下は、外から外装材を土台の下端から幅300mmほど切り取って気流止めを入れます。このとき、土台や柱の下端が腐っていないかを必ず目で確かめます。平成12年より前の家では、柱や筋交いの接合金物が入っていないことが多いので、同じ開口から合板や金物で耐震補強も一緒に行います。間仕切り壁の下は、巾木を外して室内から入れます(新住協 技術情報 第60号)。手順は圧縮グラスウールのページで紹介しています。

AIR LEAK

家じゅうのすき間が、壁の中を通って外とつながる

室内の幅木、回り縁、窓枠まわりのすき間は、壁の中の空洞を通って、床下や小屋裏の外気とつながっています。そのため、家全体の気密もとても悪くなります。窓のすき間風と、ガラスで冷やされた空気が床を流れることも、寒さの原因です。

逆に言えば、壁の上と下をふさげば、これらのすき間は外とつながらなくなり、断熱も気密も一気によくなります。

HISTORY

新住協は、まずこの欠陥を直すことから始まった

この在来木造の構造的な欠陥を明らかにし、壁の上下に気流止めを設ける「新在来木造構法」を発表したのが、室蘭工業大学の鎌田紀彦先生です(1985年、日本建築学会で発表)。これが、いまの高断熱・高気密住宅の出発点になりました。

新住協の技術情報のバックナンバーを読むと、最初の号は気密と気流止めの話ばかりです。第3号「なぜ気密化が必要なのか」(1992年)、第5号「何故気密化するのか」(1993年)、第6号「住宅の気密測定について」(1996年)と続きます。厚い断熱のQ1.0住宅の話が出てくるのは、第43号(2011年)になってからです。

まず、気流の止まった、気密の取れた在来木造住宅をつくる。それが根幹で、厚い断熱のQ1.0住宅や、さらにその先のパッシブハウスは、その上に乗る第2段階です。断熱リノベーションでも、順番は同じです。

新住協と、その先のQ1.0住宅の考え方や計算方法は、新住協&Q1.0住宅のページで紹介しています。

SOLUTION

直すには、気流止め

古い家を暖かくするには、断熱材を足す前に、壁の上と下をふさいで壁の中の空気の流れを止めること(気流止め)が最重要です。気流が止まると、もともと入っている断熱材が効き始めます。

気流止めをした後の2階建て住宅の断面図。外壁と間仕切り壁の上下、下屋の小屋裏と1階・2階の間の境目に、ピンク色の圧縮グラスウールが入っている。基礎の外側には青い断熱材が張られている
図:気流止めをした後の断面。ピンクが圧縮グラスウールの気流止め、青が基礎の外側に張った断熱材(外張りの基礎断熱)です。基礎断熱は、基礎の外側に張ることが大事です。外側に張ることで、床下が外の冷たい空気から守られます。この場合、1階の間仕切り壁の下の気流止めは要りません。新住協 技術情報 第42号の図に色を付けたもの。

気流止めだけで、暖房費はほぼ半分に

新住協の試算では、東京・練馬の木造住宅を家全体20℃で24時間暖房した場合、改修前に約25万円かかる暖房費が、気流止めの設置だけで14万円弱に、床・天井の断熱と内窓も加えると約6万7千円になるとされています(新住協「断熱耐震同時改修」↗)。

壁を大きく壊さずに気流止めを入れる方法として、新住協が開発したのが「圧縮グラスウール」による気流止めです。くわしくは、次のページで紹介しています。

参考:新住協 技術情報 第42号「在来木造住宅の断熱・耐震改修」(2010年)、第60号「圧縮GW気流止めによるローコスト断熱・耐震改修工法」(2024年)、新住協ホームページ「断熱耐震同時改修」、新住協 中部東海支部「これまでの家の欠陥と高断熱住宅の改良」。