COLUMN / 2026.11.05
売電ありきの太陽光は、元が取れるのか。
自邸の屋根に載せた12.8kWの太陽光発電(リース)を、設置から3年分の実測で計算してみました。売電と、自家消費で浮いた電気代を足して、リース料と比べています。
結果:リース期間中は持ち出し。パワコンの交換まで含めて、20年ほどでようやく元が取れます。
INTRO
はじめに
自邸(八戸市美保野)の屋根には、12.8kWの太陽光発電が載っています。初期費用ゼロのリースで、月29,062円を10年間払う契約です。
「太陽光は売電で元が取れる」とよく言われます。では実際どうなのか。設置した2023年11月から、モニターの「月ごと」画面を写真に撮ってきたので、ちょうど3年分(36か月)がそろいました。まず直近1年(2025年11月〜2026年10月)で計算し、そのあと3年分を同じ月どうしで比べてみます。

設備と契約
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| パネル | ハンファQセルズ Q.PEAK DUO-M-G11 400W、合計12.8kW |
| パワコン | 5.5kW+4.0kW の2台 |
| リース期間 | 2023年11月〜2033年11月(120回) |
| リース料 | 月29,062円、年348,744円、総額3,487,440円 |
| 売電単価 | 約16円/kWh(モニターの売電額÷売電量) |
| 買電単価 | 約23.8円/kWh(モニターの設定)。実際の電気代を買電量で割ると約29円(基本料金込み) |
ONE YEAR
1年間の実績(2025年11月〜2026年10月)
| 項目 | 量・金額 |
|---|---|
| 発電量 | 13,506 kWh |
| 売電量 | 10,638 kWh |
| 自家消費量(発電−売電) | 2,868 kWh(発電の21%) |
| 家の消費量 | 6,364 kWh |
| 買電量 | 3,498 kWh |
家で使う電気の倍以上を発電しています(自給率212%)。ところが発電の約8割は昼間に余って、売電に回っています。
お金にすると
メリットは「売電でもらえるお金」と「自家消費で買わずに済んだ電気代」の2つです。
| 項目 | 単価23.8円で計算 | 単価29円で計算 |
|---|---|---|
| 売電額 | 169,929円 | 169,929円 |
| 自家消費で買わずに済んだ額 | 68,256円 | 83,169円 |
| メリット計 | 238,185円 | 253,098円 |
| リース料(年) | 348,744円 | 348,744円 |
| 差引 | −110,559円 | −95,646円 |
1年で約10万円、月にすると8,000〜9,000円の持ち出しです。2025年の1〜12月で計算しても、差引は−8万〜−10万円でほぼ同じでした。
MONTHLY
月ごとに見ると
リース料を上回ったのは、2025年は6〜8月、2026年は5月だけです。

- 冬(12〜2月)は発電がガクッと落ちます。雪がパネルに積もった2026年1月は、発電がたった103kWhでした
- 冬は暖房で消費が増えるので、買電が一番多くなる時期でもあります
- つまり「電気が一番いる時に一番発電しない」というのが、八戸の太陽光の現実です
3 YEARS
3年分を同じ月で比べると
設置から3年分(36か月)の写真がそろったので、リースの1年ごと(11月〜翌10月)に区切って、同じ月どうしで比べてみました。

| 項目 | 1年目(23/11〜24/10) | 2年目(24/11〜25/10) | 3年目(25/11〜26/10) |
|---|---|---|---|
| 発電量 | 12,977 kWh | 13,937 kWh | 13,506 kWh |
| 売電額 | 161,425円 | 175,166円 | 169,929円 |
| 家の消費量 | 6,951 kWh | 6,838 kWh | 6,364 kWh |
| 買電量 | 4,078 kWh | 3,868 kWh | 3,498 kWh |
| リース料との差引(単価23.8円) | −118,966円 | −102,844円 | −110,559円 |
- 1年の発電量は3年とも13,000〜14,000kWhで、ほとんど変わりません。どの年もリース料には年10万円ほど届かず、3年間の持ち出しは合計約33万円です
- 年ごとの差が大きいのは冬です。1月は588→259→103kWhと、年によって5倍以上違います。夏(6〜8月)の差は2割前後です
- 家の消費量は3年で約8%、買電量は約14%減りました
消費量が減ったのは、3年目にエアコンの使い方を変えたからだと考えています。冬は、それまでのタイマー運転をやめ、SwitchBotのハブ2で室温を見てオン・オフするようにしました。必要のない運転や待機の電力が減り、1〜2月の消費は2年目より月100〜140kWhほど少なくなりました。夏は、夜のあいだタイマーで冷房を切るようにしました(暑苦しい夜はつけ直すこともありました)。6〜8月の消費は、2年目より月50〜90kWhほど少なくなっています。
10 YEARS
10年で見ると
- リース期間中(2023年11月〜2033年11月):払うのが約349万円、メリットが約238〜253万円。約96〜111万円の持ち出し
- 2033年11月にリースが終わると、設備は完全に自分のものになります。同じころに、売電の固定価格(約16円)も終わります
- その後、卒FITの単価(東北電力は9円/kWh、2026年5月時点)で売電を続けると、メリットは年約16〜18万円
- パワコンの交換も入れると: 一般に10〜15年で交換と言われるので、15年目(2038年ごろ)に30万円かかると仮定しました。それでも18〜19年目(2041〜2042年ごろ)でプラスに転じます

リースは満了後に設備が完全に自分のものになる契約なので、この前提で計算しています。パワコンの交換時期と費用は仮の数字です。
LESSON
わかったこと
- 売電ありきでは、リース期間中は元が取れない。 高断熱の家は消費が少ない分、自家消費で得られる額が小さく、売電に頼る割合が大きくなります
- 自家消費の1kWhは、売電の1kWhより1.5〜1.8倍得。 買う単価(約24〜29円)が売る単価(約16円)より高いからです。卒FIT後(9円)は差がさらに開きます
- だから「昼に使う」工夫が効く。 給湯を昼に沸かす、蓄電池やEVにためる、といった自家消費を増やす方向が、これからの太陽光の考え方です
自邸の場合の、これから
自邸は灯油ボイラーで、浴槽のないシャワーだけの暮らしです。昼の余った電気でお湯を沸かす仕組みにすると、自家消費が増えて計算が変わってきます。冬の発電の落ち込みとあわせて、引き続き記録していきます。
実験住宅としての結論
自邸は、売電ありきの太陽光を自腹で試す実験住宅です。リース期間中は約100万円の持ち出しになりますが、満了後は設備が自分のものになるので、パワコンの交換まで含めて、20年ほどで元は取れる見込みです。ただし、それは「待てば取り戻せる」という結果で、得をする載せ方ではありませんでした。
HOW TO
おすすめの載せ方
- 使い切れる量を載せる。 一番電気を使う時期に使い切れるくらいの容量が目安です。売電に回る分が減るほど、1kWhあたりの価値が上がります
- 補助金の条件ぎりぎりに合わせる。 ZEHやGX志向型住宅の補助金は、年間の消費をまかなえる容量を求めることが多いので、条件を満たす最小の容量に抑えます
- 先に断熱で消費を減らす。 GXクラスの断熱性能なら消費そのものが小さいので、条件を満たす太陽光も小さく済みます。ZEHよりGXをおすすめする理由の一つです
- 昼に使う仕組みを考える。 お湯をよく使う家族世帯なら、昼の太陽光でお湯を沸かすエコキュートが有力です。シャワーだけの一人暮らしのように使う量が少ない家では、貯湯タンクの熱損失が大きくなるので向きません
- 蓄電池は停電対策として考える。 ずらした電気の得は1kWhあたり8〜13円しかなく、充放電のロスや劣化もあるので、コスト目的では回収できません
NOTE
補足
- 数字はQセルズ太陽光モニター「月ごと」画面の値(売電額・買電額は概算)。リース料はリース会社の入金明細書から。卒FIT単価は新電力ネットの比較表(2026年5月5日時点の東北電力のプラン)から。
